乾癬とは?
銀白色の厚く盛り上がるカサブタをつけた紅斑局面が、頭、肘、膝に好発し、はがれ落ちます。物理的刺激(擦過など)の2週間後、その部分に乾癬皮疹ができます。これをケブネル現象と言います。
つまり、擦れやすいところに皮疹ができます。慢性の炎症性角化症と呼ばれます。日本人は1,000人に1人くらいで、女性は若い時に、男性は中年以降に発症します。日本乾癬学会の統計によると、10歳未満の発症が4%、10~19歳での発症が12.2%であり、子どもでも発生します。
院長は乾癬の治療で有名であり、論文や講演の実績が多数あります。2021年は、日本乾癬学会におけるセミナー講演や、日本生命病院における大阪乾癬患者友の会(梯の会)の講演を行いました。日本皮膚科学会英文雑誌(J Dermatol)の乾癬領域の編集委員として100本以上の乾癬の論文を査読しています。また、以前に読売テレビ「ミヤネ屋」で乾癬が特集された時、乾癬の解説をする医師として呼んでいただきました。
野田阪神駅前いまい皮フ科小児皮フ科アレルギー科では、乾癬の専門的な治療を行います。大阪市福島区、此花区で乾癬にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
乾癬の病型
- 尋常性乾癬 皮膚症状だけの乾癬を指します。
- 滴状乾癬 水滴のような小さい皮膚炎ができます。子どもに多いです。
- 乾癬性関節炎 関節(付着部)も乾癬で破壊されることがあります。
- 膿疱性乾癬 膿み、浮腫、発熱が生じる、重症な病型です。
- 乾癬性紅皮症 乾癬の皮膚炎が全身に及んだ状態です。
乾癬は、どの病型も診療には特殊な知識が必要な病気ですので、皮膚科専門医にお任せください。
乾癬の原因
通常、私たちの皮膚は1~2ヶ月で新しい皮膚と入れ替わっています。古い皮膚は「アカ」となってはがれ落ちます。しかし、乾癬の皮膚では新陳代謝が過剰となり、4~5日で新しい皮膚と入れ替わってしまうのです。こうなると、積み重なった皮膚がどんどんフケのようにはがれ落ちることになり、生活がとても不便になってしまいます。
当院における治療
この数年で乾癬の治療は大幅に進歩しました。複数を組み合わせた治療をすることで大きな効果が得られます。ただし、薬剤費が高価であることに注意が必要です。当院は院外処方ですが、薬局での支払金額が3割負担で1万円を超えることが多く、残念ながら費用が気になる方には良い治療がまったくないのが現状です。また乾癬の薬剤は安全管理に採血などの検査が必要です。
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塗り薬
乾癬の初期治療は活性化ビタミンD3製剤の塗り薬から開始します。タカルシトール低濃度外用薬は、幼児・小児にも使用可能です。1日2回の外用が大切です。状況に応じて、1日1回塗るだけでよいビタミンとステロイドの合剤を使用します。特に、2021年に新発売となった活性化ビタミンD3合剤のフォームは従来の活性化ビタミンD3合剤軟膏を上回る高い治療効果があります。
また、マキサカルシトール含有の合剤軟膏は塗り心地に優れており、従来の塗り薬に不満があった方でもご使用いただけます。
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光線療法
太古から乾癬には日光浴が有効であると知られていました。そのうち乾癬に有効な波長(紫外線)だけを照射する治療法です。全身に乾癬がある場合、全身型の紫外線照射器(ナローバンドUVB)による治療が適応になります。週に1回程度行います。子どもの乾癬はまれですが、ターゲット型の紫外線照射器(エキシマライト)が使用可能です。乾癬による爪の変形にも光線療法が有効です。光線療法は保険適用で、3割負担の方で1回につき約1,000円です。
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飲み薬
アプレミラスト
PDE4阻害剤という効果がマイルドなタイプのお薬です。肝臓や腎臓に負担をかけず、安全性が高いです。ただし下痢など消化器系の副作用があるので、最初は少量から飲み始めて徐々に増量します。薬剤費が4週間で16,632円とやや高価です。現在の乾癬治療は、外用剤+光線療法+アプレミラスト内服という3種類の組み合わせ治療が主流になっています。
シクロスポリン
乾癬の原因である白血球の働きを止める薬です。当院は、従来大学病院などの基幹病院でしか処方できなかったシクロスポリンの投与を行っています。効果が高く即効性のある反面、腎臓に負担をかける薬ですので、毎月採血(血の検査)で安全性を確認する必要があります。また、光線療法と併用できません。
デュークラバシチニブ
TYK2(チロシンキナーゼ2)阻害薬という、白血球が活性化する信号を止める薬です。従来の飲み薬であるアプレミラストよりも高い効果を示しますが、その高い効果を国が認めてしまったせいで、3割負担で1ヶ月あたりの薬剤費が2万5000円と高額な設定になってしまったのが難点です。投与前検査に他院との連携が必要ですが、当院で処方可能です。
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注射
バイオ製剤(生物学的製剤)と呼ばれる、乾癬の原因物質であるサイトカインを直接阻害する薬です。当院はクリニックであるにも関わらず生物学的製剤使用承認施設に認証されております。アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブペゴル、ウステキヌマブ、セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブ、ビメキズマブ、グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブの11種類の注射が乾癬に保険適用となっており、症状に応じて使い分けます。今のところ当院ではなく、前職である兵庫医科大学病院皮膚科のバイオ製剤専門外来(木曜日:完全予約制)で処方しています。なお、当院で継続処方も可能ですが、半年に1回の検査は他院で行うことになります。
やなせたかしさんの言葉に「一寸先は光」というのがあります。乾癬は適切な治療を受けないと自然に軽快することはありませんので、長年悩まれている患者さんが多い疾患です。現在は10年前とは全く違う治療に進歩しておりますので、乾癬の診療経験が豊富な当院にご相談ください。
!日常での注意点
乾癬の悪化要因として気候(冬に悪化)、ストレス(睡眠不足)、外傷、感染症、カロリーの高い食事(肉類・脂肪分)、お酒、タバコがありますので、生活習慣の見直しが大切です。また、乾癬があるだけで糖尿病、高血圧、高脂血症、リウマチ性疾患、痛風などのリスクが高くなります。熱いお湯の入浴や肌の刺激を避けることが大事です。鱗屑をはがすとかえって悪化しますので、処方された軟膏でスキンケアを行ってください。
患者会
乾癬は患者会の活動が活発で、患者さんと医療者、または患者さんと患者さんが協力してより良い治療に取り組めるように様々な活動を行っております。院長の今井は、「大阪乾癬患者友の会」の相談医にもなっております。患者会について詳しくはこちら。
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執筆者:
今井康友(医学博士、皮膚科専門医、アレルギー専門医)