アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎とは、痒みのある湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。患者さんはアトピー素因と呼ばれる、いわゆる「アレルギー持ち」であることが多いです。
乳幼児期にまずアトピー性皮膚炎が発症し、続いて気管支喘息やアレルギー性鼻炎が、40歳を越えると結膜炎が増えてきます。このように、子どもが大人になるにつれてアレルギー疾患が次々と増えてしまうことを「アレルギーマーチ」と呼び、まずはアトピー性皮膚炎の湿疹からアレルギーマーチが始まります。子どもでも大人でも、できるだけ若いうちにしっかり治療することが大切です。
福島区、此花区でアトピー性皮膚炎にお悩みの方は野田阪神駅前いまい皮フ科小児皮フ科アレルギー科までお気軽にご相談ください。
院長はアトピー性皮膚炎の治療・研究において国内外の講演や雑誌で研究成果を発表し続けています。例えば2021年夏に、皮膚科学会すべての会員に毎月送付される学会誌に、アトピー性皮膚炎の原因について執筆依頼されています (日皮会誌131(8)、1827-1833,2021)。
アトピー性皮膚炎の原因
痒みによって皮膚をゴシゴシ引っ掻いたり、乾燥肌を放置したりしていると、刺激によってインターロイキン33 (IL-33)という、免疫に警告を与える物質(アラーミン)が放出されます。すると、IL-4というアレルギーを誘発する物質が増え、IL-33とIL-4が「2型自然リンパ球」や「Th2細胞」という白血球を活性化することで、アトピー性皮膚炎が発症します。一度発症するとアレルギーマーチが生じ、アレルギーが進行しますので、早期の治療が大切です。
当院における治療(成人)
当院では最新のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインに沿い、ステロイド外用剤を適切に使用する治療を行っています。脱ステロイド療法は診療ガイドラインから逸脱しますので、当院では一切行っておりません。なお、小児の乳児湿疹(アトピー性皮膚炎)については、こちらをご覧ください。
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塗り薬
保湿剤と、抗炎症外用薬があります。湿疹になっている部分には保湿剤ではなく、以下のような抗炎症外用薬を塗ることが大切です。保湿剤も抗炎症外用薬も、塗る量が少ないと効果がありません。適切な外用量に関しては乾燥肌のページをご覧ください。また、治った後も数年間は、塗り薬を週に1~2回だけ皮膚炎が治った場所も含めて広範囲に塗る「プロアクティブ療法」によって再発予防を行い、最終的には塗り薬がなくても大丈夫な状態を目指します。
①ステロイド外用剤
ステロイドは炎症の原因である白血球を撃破します。当院で主に処方しているステロイド外用薬はアンテドラッグという、皮膚だけで効果が高く体内に吸収されると分解されて血液の中には入らないという新しいタイプになりますので、安心してご使用いただけます。さらに、保湿成分が最初から添加されている製剤もあります。②タクロリムス軟膏
ステロイドではない抗炎症外用薬で、顔に使用します。塗ると最初の1週間だけ、ヒリヒリ感があります。刺激が強い場合「タクロリムス軟膏0.03%小児用」を使います。院長は、デュピルマブ(IL-4/13阻害剤)とタクロリムス軟膏の併用療法がアトピー性皮膚炎の顔面の湿疹に有用であることを世界で初めて示し、新しいエビデンスを創出しています。(J Dermatol 2021, PMID: 34155694, 責任著者)。
③デルゴシチニブ軟膏
ステロイドではなく、JAKという分子を阻害してアレルギーを誘発する物質を効かなくさせる、新しい抗炎症外用薬です。塗ってもヒリヒリ感がないうえ、痒みを止める効果が高いです。有効成分は皮膚を貫通するため、痒疹という皮膚がゴリゴリになってしまった部分でも、皮膚の奥にいる白血球まで薬剤が届きます。塗りすぎると成分が全身に回ってしまうため、1回最大5g(1日10g)の制限があります。
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紫外線療法
紫外線を当てると湿疹の原因である白血球が勝手に消えてくれる現象(アポトーシス)を利用した治療です。当院では最新の全身型紫外線照射器Daavlin7(ダブリン7)と、ターゲット型紫外線照射器の両方を導入しています。
湿疹が全身に及ぶ場合は全身型を、難治性の手湿疹や痒疹などにはターゲット型が有効です。新しい機械では、紫外線の中でも皮膚炎に有効な波長だけを照射するため、旧来のPUVA療法のような治療回数の制限がなくなりました。
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全身療法
①シクロスポリン内服
塗り薬で追いつかない患者さんに使用する飲み薬です。昔から使われているお薬ですが、個人によって適正量が異なるため、毎月採血でお薬の効果を確認する必要があります。下記の新規治療薬よりも安価なのが特徴です。当院はシクロスポリンの投与に対応しています。アトピー性皮膚炎が良くならない方は、ぜひ当院を受診してみてください。
②新規治療薬:注射薬(デュピルマブ・ネモリズマブ・トラロキヌマブ・レブリキズマブ)、内服JAK阻害剤(バリシチニブ、ウパダシチニブ、アブロシチニブ)
院長は、兵庫医科大学病院のバイオ製剤外来において、約300例のバイオ製剤/JAK阻害剤の処方経験があります。上記の新規治療に関しては、今のところ、前職である兵庫医科大学病院皮膚科のバイオ製剤専門外来(木曜日:完全予約制)を継続していることもあり、院長が大学病院のほうで対応させていただきます。興味のある方は、まずは当院(いまい皮フ科)まで、ご相談ください。なお、デュピルマブ(デュピクセント)・ネモリズマブ(ミチーガ)に関しては症例によっては当院でも投与可能ですが、保険適用ルールが複雑です。まず、他府県から転勤の患者さんの場合、当院で継続処方は可能です。新規導入の場合は、定期的に皮膚科に受診したうえで、ステロイド外用剤を一定量以上使用した履歴がないと開始・継続できない保険適用ルールです。つまり不定期にしか受診できない(多忙な)患者さんには新規治療薬は保険適用できないルールが、社会保険で定められている点に注意が必要です。
!日常での注意点
入浴・シャワーは38~40℃、石けんは弱いものを推奨しています。入浴後に(湿疹の無い部位に)保湿剤を使うと、新しい湿疹の予防になります。ストレスや睡眠不足、お酒、刺激物(辛い物食べ物)など特定の行為で悪化する方は、生活習慣にも気を配りましょう。
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執筆者:
今井康友(医学博士、皮膚科専門医、アレルギー専門医)