なぜか当院は酒さの患者さんが多いです。保湿し過ぎな方が、ダーマペンやVビームの治療後にステロイドを外用されて「酒さ」がかえって増悪して受診される方も多いのですが、このような軽症例では、当院の治療ですぐに軽快する方が多い印象です。しかし問題なのは、ステロイドを長期に外用している患者さん(乳幼児を含む)が「酒さ」になった場合は治療が長期になることが多いこと、にあります。顔面に大量のステロイドを(ほぼすべての患者さんに)正常になった後も毎日ずっと継続外用指示するクリニックもあるのですが、意見が分かれるところではありますが、私はこれは「酒さ」「酒さ様皮膚炎」を誘発する危険性があるため、不適切治療であると考えています。これは医師だけが悪いのではなく、顔面の皮疹がゼロにならないとだめな完璧主義な患者さん(患者さんが乳幼児の場合は、親御さん)が多いことも、酒さが増えている原因の一つだと思います。皮疹が無い状態でも顔面にステロイドをずっと毎日塗ることで湿疹のない状態をキープするという不適切なアイデアが、このような患者さん(や親御さん)にとても好評のようですが、実際には医原性の酒さをかなり作っているようです(アトピー性皮膚炎がある部分にステロイドを外用するのは仕方ありません。アトピー性皮膚炎が強い患者さんは毎日ステロイド外用をせざるを得ないのです。正常なのにずっと毎日塗るのは問題があると提起しています。)おそらく、皮膚科専門医またはアレルギー学会専門医をお持ちの医師であれば、(小児または大人の)正常になった顔面に毎日長期にステロイド外用を行うことが誤りであること理解できていると思います。

・・・・ところが、「酒さ」の治療として、原因であった顔面のステロイド外用を中止するべきではあるのですが、激しいリバウンド現象(かえって顔が膿だらけに・・・)が起きます。酒さの治療として肌断食(ステロイド中止)をした場合、どうしても激しいリバウンド現象が何度が起きます。酒さのため、前医でステロイド中止を指示され、リバウンド現象が大きく出て、不審に思って当院を受診される患者さんも多いのですが、このリバウンド現象はやむを得ません。

このように難治な酒さですが、良いニュースもあります。従来末期がんの消臭に使用していた「ロゼックスゲル」が、本日2022年5月26から「酒さ」に対しても追加で保険適用になるという発表がありました。ただし「保険適用は原則3ヶ月間まで」という文言が入ってしまったので、注意が必要と思われます。ロゼックスゲルは、クリームではなく、ゲル(ジェル)ですので、塗布後に乾燥してカピカピする、などのトラブルが5%程度の方に報告されており、酒さは保湿しすぎないのが原則ですが、保湿と併用せざるを得ないこともあります。

 

追記(2023.10.20)

赤ら顔に対して、自費診療でIPLができるようになりました。学会ガイドライン(日皮会誌:133,407-450,2023)においても、赤ら顔の治療として最も高いエビデンスのある治療が光線療法であることや、光線療法がIPLでもレーザーでも治療効果は同一であること、などが記載されています。

当院のIPL(光線療法)による赤ら顔治療について、詳しくはこちらをご覧ください。